長らく自宅とバイト先の往復しかしない生活を強いられている間に××××
随分と長く歩き続けてきたものだ。
ラムを一口飲んだ。
僕は鼻腔をいっぱいに広げてラムの香りで埋め尽くした。
相変わらず足元からは散乱した醜いごみから異臭が撒き散らされているからだ。
また例の××を見つけた。これでもう百四十七匹めになるな。
うず高く積もったごみの小山の中から必死で抜け出そうと手足をばたばた振り回している。
やめてくれ。臭いがこっちまで飛んでくるだろう。
僕は極めて慈悲深い笑顔を作りながら、右足でその××を小山の中へと押し込んだ。ぐにゃりとした×の感触が僕の足の裏に届く。姿が八割見えなくなった辺りで右足を引き抜いた。足の先がすっと涼しくなる。
またしてもすり寄ってくる静寂。
ラムを一口飲んだ。
これでいい。僕はまた薄汚い地面に右足を踏み出した。
四歩歩いたところで振り返ると、先程のごみの小山は跡形もない。代わりだといわんばかりに××の×と思わしきごみがごろりと落ちていた。
嫌な気分は無くならない。
相変わらず背後からは足音が聞こえてくる。
今度は小柄な犬が僕の裾に噛みついてきた。
ところで気が付いた。僕の左の腕が肩口からきっぱりと無くなっている。
この世の不条理もここまできたというのか。
ラムを一口飲んだ。
除けても除けても、飲んでも飲んでも。
椅子取りゲームの椅子は増えない。
『ずいぶん遠くまで歩きました。
五時間ほど、ひとりで。
それでも孤独さが足りない。
まったく人通りのない谷間なのですが、
それでもさびしさが足りない。』-フランツ・カフカ
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